茶の故郷カリンポン、コーヒーで新たな歴史を刻む ヒマラヤ産高品質アラビカコーヒーの新鋭
インド、西ベンガル州の絵のように美しい山岳都市カリンポンが、100年にわたる紅茶の歴史を超えて、いま新たなコーヒー産地へと変貌を遂げています。ヒマラヤアラビカコーヒーの成長物語、生産の現状、そして世界市場への挑戦とその魅力をご紹介します。
HBC
8/12/20251 分読む
茶とともに歩んだ町がコーヒーの舞台へ
インドは広大で多彩な文化をもつ国ですが、北東部の山岳地帯「カリンポン」という地名は、多くの方にとって少し馴染みが薄いかもしれません。カリンポンは西ベンガル州東部、ヒマラヤ山脈の裾野に位置する小さく美しい町。年間を通して涼しく穏やかな気候と、緑豊かな山々と渓谷が織りなす景観から「美しき宝石」と称えられています。近隣には世界的に有名なダージリン紅茶の産地があり、長らく“茶の郷”として知られてきました。
この豊かな自然環境はただ美しいだけではありません。高い標高と冷涼な気温は、コーヒーチェリーがゆっくりと成熟し、糖分と風味をじっくりと熟成させる理想的な条件を備えているのです。
カリンポンの農家はその潜在力に気づき、長年の紅茶栽培で培ったノウハウを活かしながら、これまでになかった個性豊かなコーヒーを育て始めました。今、茶の名声を超え、コーヒーで新しい歴史を紡ぐカリンポンの物語が幕を開いています。
一世紀以上にわたり紅茶の名産地として世界的な名声を誇ってきたインド・カリンポンが、いま「コーヒー」という新たな夢に向かって歩み始めています。ヒマラヤの裾野に位置するカリンポンは、アラビカ種コーヒー豆をオーストラリアや英国などへ輸出し、重要なコーヒー生産地として頭角を現しています。こうした成功を受けて、西ベンガル州政府の農業部門は、より多くの農家がコーヒー栽培に参入するよう積極的に奨励し、「カリンポン・コーヒー」を独自ブランドとして育成する取り組みを加速させています。
新たな挑戦と成長の軌跡
カリンポンでの本格的なコーヒー栽培は、2018年に約1,000人の農家が400エーカー(約49万平方メートル)の土地にコーヒー苗木を植える試験プロジェクトから始まりました。初期は買い手を見つけるのに苦労しましたが、2022年からは国内外のバイヤーが急増。現在はバルコップ(Bhalukhop)、アルガラ(Algarah)、ギンバリン(Gimbaling)、ラライガオン(Lalay Gaon)の4カ所に栽培クラスターが形成されています。
ダージリンおよびカリンポン地域では、現在1,200人以上の農家がコーヒー栽培に携わっており、その多くは以前ショウガやカルダモンを育てていた農家です。年間のコーヒーチェリー収穫量は27トンで、そのうち12トンは政府所有地、15トンは民間農園で生産されています。加工されたコーヒーは「Kalimpong Coffee」や「Kalimpong Filter Coffee」のブランド名で販売されています。
グローバル市場への可能性
カリンポンコーヒーはすでに品質の高さを評価され、海外でも好評を得ています。2年前に輸出したポーランド向けコーヒーからも良いフィードバックを獲得。現在、コルカタやシッキム、南インドの民間企業が年間約70クインタル(約7トン)を購入しており、その一部はネパールのカトマンズにも送られています。
最近ではドバイや東アジア(韓国・日本)市場への進出に向けた取り組みも進行中です。
持続可能な品質向上への歩み
カリンポン地域は、「ダージリンティー」のように「カリンポンコーヒー」を世界的ブランドに育てることを目指しています。そのため生産量拡大と同時に品質向上にも注力しています。今年からは、従来のカルナータカ、ケーララ、タミルナードゥ州で発生していた病害リスクを避けるため、インドコーヒー委員会を通じてビシャカパトナムやアッサム産の種子を購入しています。
また、収穫した種子の30%を再植用に確保し、長期的な生産基盤を整備。さらに輸出機会拡大のための加工技術開発にも力を注いでおり、その未来はますます期待されています。


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